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取締役  宮本 英之介
ドイツの農業と食料自給率
▲ドイツ市街地のマーケットの様子

 独ヴュルツブルグ郊外のバートメルゲントハイムの農園を訪問し、自然栽培で果物や野菜の生産に従事する経営者(三姉妹)からお話を伺った。
 この農園では、近隣の生産者と連携して農産物の付加価値化、差別化に取り組んでいる。生産品目ごとに栽培工程、方法、肥料等に自ら細かい基準作りを行い、その基準を遵守して生産活動を行っているのだ。基準を参加者全員が遵守することで、ブランドと品質が徐々に消費者に理解され、価格が向上し各農園の安定的な経営に寄与しているとのことである。
  日本においては、そうした基準作りは生産者組合といった上部組織が行うのが通例だが、この農園の場合は生産者任意のパートナーシップであるという点が相違点といえる。またその基準書(マニュアル)が大変詳細で分厚く、常に改定されており、生産者の日々の経営努力が垣間見える気がした。また、販売価格は需要を判断した上で、生産者主導で価格決定を行う流通の仕組みだそうだ。この他にも、近隣のマーケット(定期市)での売り出しに参加している他、一次産品を使った加工品を販売するなど、日本の農業生産者に比較して、消費の現場をより意識した生産活動を行っているという印象を受けた。
  昭和40年には70%を誇った日本の食料自給率は、現在40%という極めて深刻な状況だ。これまで安価な食料品の大輸出元であった中国も、今後の経済成長に伴い自国の食料危機を招き、将来的には安易な輸出政策はとらない可能性も指摘されている。地産地消や食育基本法、流通機構改革等、国と生産者がアイディアを絞って自給率改善に取組むのは急務の課題といえる。
 一方で、自給率がこれほどまでに低下した背景には、戦後の市場経済に依存しすぎた流通システムも原因である。これまで大手量販店では、農産品、水産品に限らず、全て均一化、規格化した商品を店頭に陳列する傾向がみられた。その結果、サイズや見た目重視の消費傾向が主流となり、規格外の産品は安価で叩かれるため、生産者の見入りは以前に比べて減少している。また量販店どうしの価格競争の激化は、安価でかつ規格化された海外製品へのシフトを早め、結果的に自国の生産業者を苦しめる結果となったのである。 
 市場経済は適正な競争を促進し、サービスレベルを向上させるという点で様々な産業の活性化に有効である。しかしグローバル競争の中で、農業や漁業といった市場経済とは相容れない、しかしながら国の基盤となる産業の衰退を招く結果となったのが今日の現状ではないだろうか。その点ヨーロッパの消費現場では、サイズや見た目よりも、栽培工程や品質、環境保全への取組みなどの企業努力がより評価され、市場価格に反映されているという印象を受けた。
 先進国でありながら「国の本」である農業を重要産業として位置づけ、EUにおける大半の国が食料自給率80%以上を維持している。特にドイツは1970年代に60%台であった自給率を、農産物の価格保障や農家の所得保障等により約30年で100%にまで向上させている。我が国の自給率向上に向けて、産業政策だけでなく、流通構造や消費意識の面においても、ドイツから学ぶべきことは多いのではないだろうか。
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