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取締役  宮本 英之介
地域通貨と一次産業活性化の可能性
 
 2005年、7月1日から八幡浜市で地域通貨(TEYA)の流通実験が始まった。地元の八幡浜青年会議所が「地域の自立」をテーマに、まちづくり事業として取り組むもので、八幡浜市内の約120の事業所が流通実験に参加している。
 地方分権、地域主権が叫ばれる中で、地域通貨はコミュニティの再生や経済の活性化を目指した自立型まちづくりの手法として、世界的にも注目されているツールのひとつだ。地域通貨のタイプや流通形態は目的や規模によって様々だが、現在国内で約300、全世界では2000以上の導入事例があるといわれている。
 地域通貨は、非市場取引(市場経済で価格のつかないボランティア)のみを交換対象とする「コミュニティマネー型」と、市場で取引される商品やサービスも交換対象とする「経済活性型」に大別される。今回八幡浜JCが取り上げているのは、全国的にも導入事例の少ない「経済活性型」の地域通貨だ。
 近年のモータリゼーションの進展に伴い、郊外への買い物流出が顕著な当地域において、地域内限定の通貨を介して再度地元資源を見直し、消費を活発化させることは地域内の経済循環促進に繋がる。また、単一(円のみ)の市場経済の下ではなかった事業者間の交流から、異業種間、産業間の新しい連携が生まれ、地域経済にインパクトのある経営革新や新規事業創出を促進する効果も期待できるのではないだろうか。同時にまちづくり活動や社会貢献事業と絡めた循環をデザインすることで、まちづくりについての市民の参加意識や主体性も喚起できるはずだ。
 地域通貨の期待効果や可能性は様々だが、一次産業を基幹とする八幡浜市にとって、循環型の内部通貨を使って、地場産業の再活性化を目指してはどうだろうか。長年「みかんと魚の町」といわれた八幡浜市は現在、農業・漁業の低迷が商業全体にも波及し、まち全体の経済活力が低下しているのが現状だ。また、海と山に囲まれた土地の少ない立地環境から、一次産業に代わる新しい産業振興策が見出せないのも現実だ。「日経ビジネス」(2002年)の「全国衰退都市ランキング」では、八幡浜市は全国693都市の中で、不名誉にも第4位にランクされているほどだ。
 農業や漁業の衰退要因は構造的なもので特定化できるものではないが、一次生産者の特徴(弱み)として、収益を市場取引(競り)による相場に依存せざるを得ない点が挙げられる。つまり自ら価格決定権をもたないため、計画的な投資や生産、売上の確保が困難な点が特徴といえる。八幡浜市の場合、基幹産業が消費地の相場に収益を左右される農業、漁業のため、買い手市場の消費動向のなかで地域全体が厳しい経済環境に置かれているといえる。今後の農業、漁業経営には、何らかの形で買い手(利用者)のニーズを生産活動に反映させることが大切なポイントといえる。また、まちぐるみで地場産業を支える仕組みづくりや、地域の産業間の一層の連携が経済活性化のためには必要ではないだろうか。

 地産地消や産消提携等の一次産業振興策がいわれて久しいが、前述の地域通貨を使って、まちの活性化にも役立つより幅広い取組みができるのではないだろうか。
 農業や漁業は生産活動が安定的に発生せず、繁忙期が特定の時期に集中することが多い。そのため、農業では繁忙期には様々な人手(研修生等)を募集して手伝ってもらっていることが多い。例えばこれらの支援の対価を地域通貨として支払ってはどうだろうか。雇い主と雇用者という形式的な結びつきではなく、お互いの信頼に基づく緩やかな関係のため、募集方法によっては様々な機関や団体、教育機関等の支援も得られるのではないだろうか。農業を手伝うことで住民が一体となって基幹産業を支えているという意識が芽生えると同時に、対価は地域限定の通貨のため、地元の財、サービスの循環に寄与する。また繁忙期の農業の人手不足も解消するうえに、農業と地元商店街など他の産業との交流も生まれる可能性もある。
 また、地域通貨を小口証券化して、近い将来の生産物購入の権利(お買い物券)として消費者に付与(販売)することも可能である。一次産業は前述の通り需要(相場)の予測がつかないため、売上に見合う計画的な投資が困難だ。しかし、この方法で地域通貨を活用すると、生産者にとっては、生産に必要な経費を事前に回収することが可能となり、計画的な投資、経営の遂行に役立つ。消費者側のメリットとしては、信頼できる生産者と直接取引できることで、食生活での安心感、満足が得られる点だ。特に最近では、物流技術も発達しているため、この方法で首都圏の消費者と地方の一次生産者が結びつくことも可能だ。また地域通貨は小口化されているため、必要な数量のみの地域通貨を利用することでニーズにあった取引ができる。
 もちろんこれらの地域通貨の仕組みづくりは一朝一夕にできるものではないし、官民様々な機関の協力体制も必要となる。地域通貨そのものにもクリアすべき法律や課題も多い。地域通貨はあくまでまちづくりツールのひとつに過ぎないが、地域の環境と資源に適合され、理想的な形で導入された場合の地域経済やまちづくりに与える期待効果は未知数だ。
 まずは、プロジェクトに参加するメンバー全員がその理念と目的を共有することが最も大切なのではないだろうか。その理念とビジョンをどう築き上げるかが地域通貨をまちづくりに活用する第一歩だと思う。(2005.7.31)

 地域通貨「TEYA」PR資料「地域通貨の可能性について」
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