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有限会社 昭和水産
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| 愛媛新聞社 多田 良介 |
| 船団荒波を行く(トロール漁体験記)X |
= 5 = 「帰 港」
南風(まじ)が吹いてきた。しけるぞ」。漁師の天気予報は正確だ。浜田淳二漁労長(43)の言った通り、航海4日目は未明から雨。風が強まり、うねりが出てきた。波高2.5メートル。船が大きく横揺れを繰り返す。
操業はそんな中でも容赦なく続く。午前1時20分、漁労長が投網を指令。乗組員は揺れる足元に踏ん張りを利かせ、ずぶぬれになって作業を進めた。時折、開放構造の船尾から波が船内に入り込む。この波に足をすくわれ、飛ばされた経験はだれもがしている。
どんなしけでも常に甲板作業の先頭に立つのが魚本徳久甲板長(32)。最年少の乗組員だ。しかし船乗りに年齢は関係ない。投網と揚網の際、笛で作業の指揮を執る。
27歳のとき、10年間いた大阪から帰郷。すぐに知人を介して、浜田漁労長から声を掛けられた。「血まで吐いた」という乗組員も多いなか、初航海から1度も船酔いをしたことがない意欲を買われ、4年目で甲板長に抜てきされた。
1度だけ、苦い経験を味わった。一昨年の1月、高知沖での操業中。注意を要する投網の際、網に付着していたゴミが腕に絡まり、はね飛ばされた。頭を強打。ヘリコプターで病院搬送され、一命を取り留めた。
ただ、そこからが魚本甲板長の真骨頂。「責任は持てない」との医者の言葉を背に、2週間で自主的に退院。その日のうちに松葉づえ姿で船に戻った。「よっぽど肝を据えないと、トロ乗りは務まらん」。強い覚悟で船に乗っている。トロール船乗組員の高齢化は著しい。第15海幸丸の8人の平均年齢は47歳。これでも他船と比べてまだ若い方だという。仕事のきつさが敬遠され、金銭面での魅力も薄れ、船に乗り込もうとする若者は少ない。そんな中での貴重な人材。
「ものになるかのう」。浜田漁労長は、将来の漁労長候補として魚本甲板長に期待している。
午後になって、うねりは強さを増してきた。波高4.5メートル。波が船底を突き上げ、船は左右に30度近く傾く。
たまらず船室で横になっていると、突然船のエンジンが止まり、電気もすべて消えた。あまりの揺れにエンジンが緊急停止したのだ。静まり返った船内。波が船板をたたく音だけが響く。菊地健二機関長(43)があわただしくエンジンルームに駆け込み、5分後には復旧。数年に1度のアクシデントだという。
「いい経験したな」。こちらは生きた心地がしないのに、中村哲二船長(49)は悠然とたばこをふかして笑っている。
「帰るぞー」。まだ漁を続けたそうな様子だった浜田漁労長もさすがに操業を断念。午後2時、15番網を揚げ終えると、予定を1日早めて帰路についた。
4日間、全航程480キロの航海で、水揚げは935箱。翌朝、市場でせりに掛けられ、売り上げは174万円だった。これから2隻分の燃料費約70万円と箱代、氷代、そして人件費が差し引かれる。獲物がせりに掛かっているころ、第15海幸丸はすでに新たな航海にたっていた。 (おわり)
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| (2004.5.6 愛媛新聞掲載) |
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